子育てをしていると、イライラしてしまう瞬間は誰にでもあります。 ですが、離婚してすぐの頃の私の「イライラ」は、尋常ではありませんでした。
仕事・家事・子育ての全てを一人で背負うプレッシャーと、「私のせいで息子から父親を奪ってしまった」という罪悪感。 「もっと余裕を持って接したいのに」 「息子を幸せにするために離婚したはずなのに」 そう思えば思うほど、些細なことで感情が爆発し、息子に声を荒げてしまう。そして、寝顔を見ながら「母親失格だ」と泣く。
そんな自己嫌悪のループから私を救ってくれたのは、「イライラをゼロにする」という諦めと、「イライラした“後”に、どうやって自分を取り戻すか」という具体的な「リセット術」でした。
この記事は、一般的なリラックス法の紹介ではありません。 私が「鬼ママ」になってしまったあの夜、どうやって自分を取り戻したか、そのリアルな体験談です。
心が折れた夜:「なんでできないの!」と叫んだ日
私の状況:離婚直後、心も体もボロボロだった
離婚から約1ヶ月。 新しい生活のセットアップ、仕事の引き継ぎ、慣れないワンオペ育児で、私の睡眠時間は毎日3〜4時間でした。 当然、心も体もボロボロ。睡眠不足は、確実に人の優しさを奪います。
その日の出来事:息子の「宿題」が引き金だった
その日も、疲れて帰宅し、夕食の準備をしている時でした。 息子がリビングで、学校の宿題である「音読」をしていました。
何度も、同じ行を読み間違える。 「ママ、聞いてないでしょ!」と、今度は私を責める。
普段なら「大丈夫、ゆっくりでいいよ」と言えたはずでした。 でも、その日はダメでした。
プツン、と何かが切れました。 私はキッチンの包丁を置き、息子のところへツカツカと歩いていき、教科書を奪い取るようにして叫んでいました。 「なんで、たったこれだけのことができないの!」
息子は、ビクッと肩を震わせ、みるみるうちに目に涙をためて、声を殺して泣き始めました。
自己嫌悪:「私は、この子を傷つけるために離婚したんじゃない」
我に返った時、私は最低でした。 子どもの宿題サポートでイライラしないために心がけたこと の記事で書いた「工夫」とは、真逆の行動でした。
私は息子に「ごめん」とも言えず、その場から逃げるようにキッチンに戻り、シンクの前で崩れるように泣きました。 「母親失格だ」 「私は、この子を傷つけるために離婚したんじゃない」
私を救った「5分間の緊急リセット術」
このままではダメだ。 息子のところに戻らなければ。でも、こんな顔では戻れない。 私は、シンクの前で、自分を落ち着かせるためだけに行動しました。
ステップ1:お湯を沸かし、マグカップを「両手で」持つ
アロマを焚くような余裕はありません。 私は、ただヤカンでお湯を沸かし、インスタントのココアをお気に入りのマグカップ(息子がくれた、取っ手の欠けたマグカップです)に淹れました。 そして、その温かいマグカップを「両手」で包み込むように持ちました。
手のひらに伝わる「温かさ」が、凍りついた心を無理やり溶かしていくようでした。
ステップ2:「香り」で強制的に呼吸する
ココアの甘い香りが立ち上ります。 私は、その香りを嗅ぐためだけに、意識的に「4秒かけて息を吸い、8秒かけて吐く」深呼吸をしました。 イライラしている時、人は呼吸を忘れています。 「温かい飲み物の香り」は、私に「呼吸」を思い出させてくれました。
ステップ3:好きな「ハンドクリーム」の匂いを嗅ぐ
キッチンに置いてあった、ロクシタンの「ラベンダー」のハンドクリームを手に取り、手の甲に塗り込みました。 そして、その手を鼻に近づけ、もう一度深呼吸。 ココアの「甘い香り」と、ラベンダーの「落ち着く香り」。 この「香りの上書き」が、私のささくれ立った神経を鎮めてくれました。
孤独を感じたときに私を救った習慣 にも書きましたが、こうした「小さなご褒美」が、当時の私を支えていました。
習慣化:「イライラの波」が来る前にやること
あの「鬼ママ」になった夜の経験から、私は「爆発する前」に手を打つようになりました。
- 音楽をかける: 夕方の「魔の時間帯」は、無音だとイライラが募ります。私はSpotifyで「ジブリ・ピアノ・ジャズ」を小さな音で流すようになりました。音楽は「家の空気」を変えてくれます。
- 子どもと一緒に寝る: 睡眠不足が最大の敵だと学びました。夜中の家事を諦め、子どもと一緒に21時に布団に入る。それだけで、翌日の心の余裕が全く違いました。
まとめ:「イライラしてもいい」と自分を許すこと
イライラを完全になくすことはできません。 特に、一人で全てを背負うシングルマザーなら、なおさらです。
大切なのは、「イライラしないこと」ではなく、「イライラした自分を責めすぎないこと」。 そして、「私、今ヤバいかも」と気づいた時に、自分を5分間だけ甘やかす「リセット術(私の場合は、温かい飲み物とハンドクリームでした)」を持っておくことです。
母親として完璧じゃなくてもいいと思えた瞬間 この記事を読んでくださっているあなたが、かつての私のように自分を責めすぎていないことを、心から願っています。
