シングルマザーとしての生活は、「私がしっかりしなければ」という呪縛との戦いでした。 「父親がいない分、私が2倍頑張らなければ」 「家事も、仕事も、子育ても、全部100点でなければ、この子は“普通”に暮らせない」
私も離婚直後、その強迫観念に駆られ、何事も完璧を目指していました。 しかし、その結果、心身ともに疲れ果て、ある夜、私の心と体は、ついに限界を超えました。
この記事は、「頑張りすぎない工夫」のリストではありません。 私が「頑張りすぎ」て倒れ、文字通り「どん底」を見たあの日から、どうやって「手抜き」を覚えて自分を取り戻したか、その全記録です。
私が「完璧」だった頃、そして“壊れた”日
私の「完璧」の定義
離婚直後の私の「完璧」の定義は、今思えば狂気の沙汰でした。
- 仕事: フルタイム勤務。絶対にミスをしない。
- 家事: 毎朝5時起き。床には髪の毛一本落ちていない。
- 食事: 冷凍食品は“悪”。三食すべて手作り。
- 育児: 毎晩、寝る前に必ず絵本を3冊読み聞かせる。
これらすべてを一人でこなし、「私は大丈夫、やれている」と自分に言い聞かせていました。 しかし、その「大丈夫」は、薄氷の上で成り立っていました。
39度の熱。そして、割れた皿
その日は、朝から悪寒がしていました。 でも、仕事を休むわけにはいかない。息子を保育園に送り届け、解熱剤を飲んで出社しました。 フラフラで仕事を終え、息子を迎えに行き、スーパーで買い物。
帰宅した時、体温計は「39.2℃」を指していました。 それでも私は、「夕食を作らなければ」と、震える手でキッチに立ちました。
息子の「ママ、お腹すいた」という声が、遠くに聞こえる。 野菜を洗おうとした瞬間、めまいがして、持っていたお皿を床に落とし、ガシャン!と大きな音を立てて割ってしまいました。
その音で、私の何かが、プツンと切れました。 「もう、無理だ」 私はその場(キッチンの床)にしゃがみ込み、散らかった皿の破片の前で、声を上げて泣き崩れました。 息子が、驚いた顔で私を見ていました。
「頑張らなくてもいい」と気づいた、一本の電話
救いとなった友人の「一言」
どれくらい泣いていたか分かりません。 床に座り込んだまま、私は友人に電話をかけていました。 「どうしたの?」という声に、私は「お皿、割っちゃった…熱があるのに、ご飯作れない…私、もうダメかも…母親失格だ…」と、泣きじゃくりながら話しました。
電話の向こうで、友人は笑い飛ばすでもなく、静かにこう言いました。
「そっか。よく今まで一人で頑張ったね。…もう、頑張りすぎなくていいよ」
支えになった言葉や周囲の人の存在 の記事にも書きましたが、この一言が、私の「完璧でなければ」という呪縛を、粉々に砕いてくれました。
「今日は、ピザでも頼みなよ。息子くん、喜ぶよ」 「熱がある時は、休むのが母親の仕事だよ」 私は、その夜、生まれて初めて「夕食を作る」ことを放棄し、デリバリーのピザを頼みました。
私が「完璧」を捨てた、3つの「手抜き」術
あの日、39度の熱で倒れたことが、私の「転機」でした。 私は、死ぬ気で「完璧」を目指すのではなく、生き残るために「手抜き」を覚えました。
1. 「家事ゼロデー」の導入
あの日、ピザを食べた息子は、手作りのご飯より嬉しそうでした。 床に皿の破片が転がっていても、洗濯物が山積みでも、私たちは生きていける。 その気づきから、私は「やらない日」を作りました。 掃除は週末のルンバだけ。水曜はレトルトカレーの日。
2. 「助けて」と言う勇気
あの日、友人に電話するまで、私は「助けて」と言えませんでした。 でも、倒れたことで、一人では無理だと認めざるを得ませんでした。 翌週、私は市の「ファミリー・サポート」に登録しました。 シングルマザーが助かった支援制度と申請体験談 の記事にも書きましたが、これは「手抜き」ではなく、子どもを守るための「戦略」でした。
3. 「自分時間」の強制確保
私が倒れたのは、自分を全く労わっていなかったからです。 今は、子どもが寝た後、忙しい毎日の中で見つけた『自分時間』の過ごし方 の記事のように、15分だけでも好きな紅茶を飲む時間を「強制的に」確保しています。
まとめ:完璧を辞めたら、本当の笑顔が増えた
「完璧な母親」を辞めて、家は少し散らかるようになりました。夕食に冷凍食品が並ぶ日もあります。 でも、あの頃より、確実に「親子で笑う時間」が増えました。
私が「母親として完璧じゃなくてもいい」と心から思えたのは、皮肉にも、完璧を目指して倒れた、あの「最悪の一日」のおかげです。 (※母親として完璧じゃなくてもいいと思えた瞬間)
今、「もっと頑張らきゃ」と自分を追い込んでいるあなたへ。 あなたが倒れてしまうことこそが、子どもにとっての一番の不幸です。 そのままでも、あなたは十分すぎるほど頑張っています。 「頑張らない」勇気を持つことが、あなたと子どもの笑顔を守る、一番の近道だと、私は信じています。
